『ここはアフリカなのか』
本当に信じられなかった。ヨーロッパとしか思えなかった(ヨーロッパには行ったことはないが(笑))。この衝撃を受けただけで来た甲斐があったと感じた。綺麗に舗装された道路のどこも陥没していない。歩道と車道に隙間はなく、縁石が綺麗に敷かれている。道沿いにはセメント造りの家が並び、壁を彩る白や水色、オレンジ、ピンクなどパステルカラーは晴れ渡る青空にぴったりである。南国らしいタンクトップやキャミソール、短パン・ミニスカをきれいに着こなした黒人が道を行き交う。道端に座り込んでいる人がいたり、老朽化した建物も垣間見えるものの、概して地中海沿岸かのような街並みがどこまでも続いている。アフリカ水準で訪れた旅人にとっては衝撃的であった。
アフリカらしくない理由を挙げるとすれば、ゴミゴミしていないところであろう。アフリカの都市といえば、信号のない道路を、ない隙間を縫って走るバスやバイタク、無秩序に並んだ露店に屯する地元民、そこら中に捨てられたゴミ、未舗装の道路や道路のくぼみから舞い上がる砂埃、こんなもので溢れかえっている。とにかくゴミゴミした空間である。カーポヴェルデにはこれらの要素が全くない。実際、アフリカとは言ってもセネガルから600km程度離れているし、アフリカというカテゴリーに含めるのが間違っているのかもしれない。カーポヴェルデの首都プライアはそんなことを感じさせた街であった。
『俺はこんなわくわく感を期待してここに来たわけじゃない。アフリカを楽しみにしてきたはずだ。ここでこんなに心踊っていていいのだろうか。』
とかなんとか思いながら、街を観光し始めた。
朝8時、昨日までカーポヴェルデに来ることを全く考えていなかった私は、空港でチケットを入手するという博打に出た。空港にどのエアラインのオフィスがあるかも知らないまま、前日に午前中のセネガルエアの便で行くしかないということだけを調べて、タクシーで空港に向かったのだ。
実際のところ、前日にフライトスケジュールを相当調べていた。そして、夕ご飯前後にネットカフェに行き、セネガルエアとTACV(カーポヴェルデの航空会社)のタイムスケジュールを徹底的に調べた結果、14日昼前ダカール発で16日夕方ダカール着の便しかないらしいということがわかっていた。つまり、前日にネットで予約することはできなかったため、空港に行ってチケットを買うしかなかったのだ。空港までわざわざ行ってチケットを買えないリスクはそれなりにあったが、それだけでカーポヴェルデを諦めたくない。同宿だったアメリカ人とサンルイまで同行するのも手だったが、彼らはバイクで行くので自分がついて行くことはできない。セネガルに12日から18日まで計一週間いるのも考えたが、さすがに長過ぎるしそれだったらセネガル南部のジガンショールに行きたいが、それだと時間的にはカーポヴェルデに行くのとほぼ変わらない。そんなこんなで、結局リスクをとって、空港でチケットを調達することにしたのだ。
しかし、セネガルエアのカウンターに行くと、空席僅かということもなくあっさりチケットを買うことができ一件落着した。ただ、次のシエラレオネへの移動の関係で、2泊3日の弾丸ツアーにならざるを得なかったのはやはり心残りであった。出発は11時20分、現在8時。カーポヴェルデのビザは確実にアライバルで取得できるが、支払いがユーロのみと聞いていたのでその分のユーロだけ空港で両替して、座って待っていた。
早朝のダカール。明るいがまだ人通りがほとんどない。
いざ、カーポヴェルデへ!
カーポヴェルデは全部で9つの島からなる島国で、旧ポルトガル植民地である。アフリカ大陸からは西に凡そ600kmほど離れており、セネガルの首都ダカールからのフライトで約1時間の距離である。それぞれの島は最長で300kmほど離れており、TACVというカーポヴェルデの航空会社が国内便を運行しているほか、船でも移動することができる。
カーポヴェルデの最大の特徴は、カーニバルである。毎年、年明けと8月に大々的に開催されるらしく、有名なのだそうだ。私が訪れた9月はシーズンではなかったわけだが、それでもカーポヴェルデで次に訪れた都市で、毎週日曜に開催されているコンサートを見ることができ、お祭りの名残りを味わうことができた。
この日、私が訪れた街は首都のPraia、プライアである。中心街はPlateau、プラトーという小高い丘の上にあり、その周辺は低地であったり、また丘であったりと起伏を繰り返している。島の緑とカラフルな家の街並みが起伏に沿って続いて行く景色が美しかった。
街の主要交通機関はバスかタクシーで、バスはだいたい50円超で初乗りから好きなところまで行くことができる。また、信じられないことに、バスのルート上であれば、道端から合図をすればどこでも止まり、乗客をピックアップしてくれるのだ。横断歩道を渡っている人がいれば必ず止まるのだからこれもびっくりである。バス停らしいバス停がちゃんと設置されており、緑の半円の円筒状に屋根が特徴的である。
きれいなバス。
新しい街に着くととりあえず自分の足で歩き回ってみないと気が済まない私は、主要なバス乗り場まで歩き、来たバスに乗って終点近くの丘の上まで行ってみた。降り立ったバス停から海岸に向かって歩いてみると、海岸線へと降りて行く坂道沿いに白い家々が建っており、本当に地中海沿岸の家を見ているかのような光景が広がっていた。家の近くのベンチに座り込み向かい合ってゲームをしているのを覗き込んでみたり、近くの家の子どもたちと遊んでみたり、自由な時間を私は満喫した。太陽の日差しを燦々と浴びつつ、プラトーに戻ろうとしたが途中で道がわからなくなったので、また適当にバスを拾い街中に戻った。
写真を快諾してくれた。素敵な笑顔!
どこ行っても子どもはかわいい。
本当は山の上?にある世界遺産に行ってみたい気持ちもなくはなかったが、ポルトガル語が全くわからず自分が持っていたガイドブックにもその世界遺産の名称などが載っていなかったので諦め、こうして自分なりに一通り街を見終わった私は、夜に一人で出歩くのは危ないと聞いていたので、宿に帰って翌日以降の予定を考えていた。
プライアは首都で、都市たることがその特徴らしい。他の島には火山やビーチ、カーニバルなどそれぞれ特徴があり、観光客はそれらを楽しむのが王道。だとすれば、別の島に行きたい。
プライアから一番近い島はFogo、フォゴといい、活火山に登ることができるので有名である。他島に行くには、時間もコストもかからないので最良の選択肢である。溶岩湖や火山といった無機質だがエネルギッシュな自然は好きなのでここに行こうと考えていたのだが、スケジュールに合うフライトが満席だったため、断念せざるを得なかった。
次に考えたのがSao
Vincente、サオビンセントである。Lonely Planet、ロンプラではプライアの次に紹介されており、魚の朝市やビーチ、後背のなだらかな山など見所は多い。『フォゴには行けないしなんとなくここがいいかなぁ』と、綿密に検討もせず、そう思っていた。プライアのある島の反対側にはTerrafal、テラファルというビーチがありここに行くことも検討していたが、『9つも島があるのに1つしか行けないのではつまらない』という単純な理由でサオビンセントに行くことに傾きつつあった。
宿の近くのスーパーで買ったパンやソーダで腹を満たしつつ、翌日に限らず今後の予定を考えながら部屋でゴロゴロし、その日は寝た。
0 件のコメント:
コメントを投稿