2013年10月22日火曜日

9/15 カーポヴェルデ2日目 静かで落ち着く街

5時、プライアのホステルの部屋で、サオビンセントへの便の予約を証する書面と睨めっこし、その日どうすべきかを考えていた。前日プライアに到着した直後、お金を払わずに席だけを確保していたのだ。しかしどれだけロンプラと書面と睨めっこしたところで何も変わらない。けっこうな時間悩み続けたが、やはりサオビンセントに傾いたまま気持ちは変わらなかった。

朝日に照らされるプライア。

サオビンセントの主要都市はMindelo、ミンデロという名前でロンプラを読む限り、カーニバルで有名な街らしい。しかしその肝心のカーニバルは年初か8月らしく、今は季節外れらしかった。『でも海沿いの街だし(プライアも海沿いだけど)山へハイキングに行けるしビーチがあるらしいし、いいんじゃねぇの』くらいの軽い気持ちで向かった。西アフリカましてやカーポヴェルデなんて次いつ来る機会があるかわからないし、やりたいことをやればいい。
午前11時20分発の便に乗るべく、プライアの空港には午前9時半ごろ到着しチェックインカウンターに向かったが、まだ開いていないにも拘らず長蛇の列ができていた。サオビンセントともう一つの国内線がだいたい同じ出発時刻で、その乗客が並んでいたらしい。『そんなにたくさん人がいるわけじゃないし、チェックインで遅れることはないだろう』と思って列に並ばずその辺をぷらぷらしていたのが間違いだった。列はみるみる長くなり、カウンターがオープンしても、みんな大量の荷物を持っているため1グループのチェックインにとても時間がかかる。『まさか1時間以上もチェックインで待たされるなんてないよな』と思っていたら時計の針は11時を回っていた。長蛇の列の中には、どうやら自分と同時刻の便以外に搭乗する人もいたらしく、このまま待っていたのでは本当に置いていかれかねない。さすがにやばいと思ったので横入りしてチェックインさせてもらい、なんとか間に合った。と思っていたら、係員に話を聞いてみるとまだ搭乗手続きすら始まっていないらしく拍子抜けしてしまった。やはりここはアフリカだった。
後からわかってきたことだが、西アフリカの航空会社も何の告知もなしに1時間くらいは遅れるらしく、空港到着やチェックインの時刻もそれくらい見込んでのもので何の問題もないようだ。

TACVの飛行機。どれもプロペラ機だ。 


茶色く低い山と荒野に四方を囲まれた中に小さく白い直方体の建物がぽつんと建っている。山がちな島の中で平らな土地を確保するには、街から離れた空き地を選ぶほかなかったのかもしれない。結局40分遅れでプライアを発った自分は、1時間程のあっという間のフライトを終えてサオビンセントに到着した
この日は特に人との出会いに恵まれていた。お陰で今回の旅行の中で一番充実した日になったと思う。
空港に降り立ちバックパックを回収した自分は、ミンデロに向かう観光客を探した。街と空港を行き来するタクシー代を極力抑えるため、空港でタクシーを誰かとシェアできないかと目論んでいたのだ。カーポヴェルデは白人観光客が多いので簡単に見つかるだろうと思っていたが、空港で白人カップルを見つけタクシーシェアをお願いすると快諾してくれた。しかも、予めタクシーを手配してあったらしく、値段交渉もほとんどする必要無く(カーポヴェルデではそもそもあまり値段交渉しないけど)街まで行くことができた。『400CVEで格安、ラッキー!』タクシーに乗り込み、いざ街へ。
カップルは外見も話し方も穏やかで、とても好印象だった。フランスのトゥルーズ在住のフランス人で、彼女の方の祖父がカーポヴェルデ人で、ミンデロに住んでいるそうだ。彼女はカーポヴェルデを訪れるのが4回目で、彼の方は初めて。サオビンセントの前はフォゴで登山したらしく、「とっても良かったよ!」と絶賛していた。『行きたかったけど、行けないもんは仕方ない』と心の中で開き直ってみたけどやっぱり羨ましかった。
彼女の方がミンデロに詳しいと知ってからそちらに自分の興味が移ってしまい、何か情報収集のために話をしているみたいになって申し訳なかったが、今夜コンサートがあるということも教えてもらい、しかも目的の宿の目の前で降ろしてもらい、初対面なのにいきなりお世話になってしまった。本当は電話番号を聞いておきたかったのだが、カーポヴェルデではどうせ電話は使わないだろうと思いプライアでSIMカードを買っていなかったので聞けなかった。しかも名前を聞くのも忘れてしまい、また街のどこかで会えたら会いましょう状態になってしまった。

泊まった宿。ロンプラに書いてあったより遥かに好印象。

ともかくも、ミンデロの宿もまあまあ素敵で、今度はシェアシャワーではなく専用シャワー・トイレだった。残念ながらホットシャワーはお預けだったが、宿らしい宿に泊まれて嬉しかった。ダカールに戻ってからの宿と比べたらそれはもう快適だった。
宿に到着したのがだいたい午後2時前後。ミンデロに長く滞在できるわけではないので、休む間もなく早速部屋を出た。特に何かやりたいことがあったわけではなかったが、とりあえず市内散策するに限る。
しかし、今日は日曜日。昨日のプライアも若干その卦があったが、休みの日に開いているお店はほとんどない。それほど大きくない中心街はガラガラで本当に人っ子一人歩いてない。治安の悪い危険な街を歩いてるわけでもないのに。市場も閉まっているし、大きめのスーパーですら、さっき開いていたと思ったのに、また通りかかったらいつの間にか電気が消えて営業が終わっているという始末である。一通り中心地を歩きまわり、少し品のあるレストランで質素なカーポヴェルデご飯を食べた後、市内にいても仕方ないので、ハイキングがお勧めというモントヴェルデに登ってみることにした。ハイキングにも行けるとロンプラに書いてあった山である。歩くことにかけては自信があったので、早速ホステルから山の方に向かって歩いてみた。

がらがらのレストラン。せっかくガラス張りでおしゃれなのに。

煮豆に味付けしたものと卵焼き。豆の方がカーポヴェルデ料理らしい。

道はどこまで行っても舗装道路か石畳で、陥没しているということはなかった。さすがに中心地をはずれるとパステルカラーの建物はなくなり、色彩豊かではなくなったが、それでも街並みとして違和感はない。『やっぱり豊かなんだなぁ』と思いつつ緩やかな坂道を上った。

フットサルを楽しむ少年たち。

ある程度上ってきたが、自分の目的地がどこかわかっていたわけではない。自分の視界には大きく2つの山がそびえ立っていて、明らかに左手の山の方が近くにあった。『ハイキングに来られるってロンプラに書いてあるくらいだからそんなに遠くないよな』と思い、勝手に向かって左手の山をモントヴェルデだと決めつけて上っていたのだ。しかし他に旅行者がいてその人たちについて行けばいいわけでもなく、周りには地元の人の家しか見えず、自分の進んでる道が正しいのか全くわからなかった。いい加減どっちの山も遠いのでヒッチハイクでもしてみようかと思い、通りかかった車の助手席にいたおっちゃんに親指を上に立てて合図してみたが、何の合図かわからなかったらしく、『イェーイ』みたいなノリでおっちゃんに同じジェスチャーを返される始末。『おっかしーなー、ヒッチハイクのやり方間違えたかな?』
ヒッチハイクは到底無理そうなので、近くを通りかかった地元の若者4人組に、左の近いほうの山を指さし「モントヴェルデ?」と聞いてみた。これで違うと言われたら諦めるつもりだった。すると、『違うよ、あっちの遠い方の山がモントヴェルデ。』と遠い方の山を指差しながらポルトガル語で返してきた。「まじかー」と日本語でつぶやき、そこでハイキング終了。ちょうど通りかかったバスに乗り、今まで歩いてきた道を下った。ハイキングは簡単じゃなかった。

奥に見えるのが、モントヴェルデだと思ってた近い方の山。

バスがどこに行くのか全くわからなかったが、とりあえず変な方向に行かない限り、気の向くままに乗ってみようと思っていた。すると、たまたま乗ったバスが良いバスで、ちょうど行ってみたかったビーチまで直行便で連れて行ってくれた。ハイキングから切り替えて今度はビーチである。

オレンジの建物がバーでその左奥がビーチ。曇ってるのが残念。

ビーチ自体はそこまで大きくなかったし、空も曇りがちでめちゃくちゃキレイというわけではなかったが、海辺の二階建てのオープンバーと合わせてこぢんまりとしており、良い感じであった。日曜なのに観光客は多いし、バーはちゃんとやっているし、ここだけ活気があった。ここから宿に戻ってもどうせすることがないし、海辺でぼーっとするのは大好きなのでここにしばらくいることにした。
観光客相手に小さな魚のフライを売るおばちゃん、セネガルから観光に来たという少年たち、なぜか砂浜に並べられているぼろいトレーニング機器で筋トレをしているムキムキのおっちゃんたち、地元の人と話をしたり何もせず海を眺めていたり、のんびり過ごした。

小さいけど魚のフライ。
  
ビールを飲んでたバーから。

砂浜でうろうろしていると、たまたま昼に会ったカップルと再会した。やっぱり街は小さい。少し話をすると、どうやらコンサートがあるのはこの砂浜らしい。昼に聞いた時は別の広場だと聞いていたので、移動する手間が省けてちょうど良かった。といっても歩いても15分程度の距離だが。
コンサートが始まるまでバーでビールを飲むことにした。カーポヴェルデに来てからまだ一杯もビールを飲んでいない。
一人で砂浜向きのカウンターでビールを飲んでいると、「日本人?」と地元の若者が話しかけてきた。日本人とか中国人とか北東アジアの人の見分けがつく人はアフリカだと相当珍しい。聞いたところによると彼は中国人と一緒にビジネスをしていて、見分けがつくらしい。
「この島にはどれくらいいるの?」
「一日だよ。」
「じゃあ、秘境みたいに凄く自然がきれいなところがあるからそこ行きなよ!ミンデロから船で1時間くらいで行けるから。」
「本当?すごく行ってみたいんだけど、明日のお昼にここを出なきゃいけないんだ。」
「え、一日で今日を入れてってこと?短いなぁ!」
フランス人カップルにも短いと言われた。そんなことは自分でも重々承知していて、十二分にカーポヴェルデを堪能するなら1ヶ月いると思う。もう少し移動手段が融通利けばあと一泊は伸ばせたのに!
彼と話した後もしばらくちびちびとビールを飲んでいると、バーの前の広めの歩道で大きなドラムを持った楽団みたいな人が集まり始めてきた。いよいよコンサートの開始だ。ちなみにコンサートと言っても、日本で想像するような大々的なものではなく、演奏時間は20分もない短い小規模のものである。20人くらいのグループでそえぞれがドラムを持ち、指揮に合わせて勢いよくドラムを叩く。テンポ良く力強い打撃が心地よかった。

ドラム演奏の後は、砂浜で自由参加のゆるゆるエクササイズが始まった。音楽に合わせて体を動かすトレーナーに合わせて、参加者も体を動かすというものだ。こちらの方が長く30分近くやっていたんじゃなかろうか。
有名なカーニバルは全然違うものなんだろうけど、それでも夕方のビーチでそよ風を感じながらビールを飲むには十分なもので、見ているだけで楽しかった。カーニバルを見る機会も自分の人生の中で訪れればよいなぁ。

出し物が終わるころには午後7時を過ぎており、辺りはだいぶ暗くなっていた。このまま宿に帰っても良かったが、フランス人カップルが別の場所で夕ご飯を食べた後にまたビーチに戻ってくると言っていたのでもう少しiPadをいじっていることにした。しかし、2時間近く待ったが、午後9時ごろになっても現れない。これ以上待っていると宿に帰るバスがなくなってしまうかもしれないと思い、会えないのは残念だったが宿に帰ることにした。


明るい時に撮ったバーの写真。中ではたぶんプレミアリーグの中継をやっていた。

中心街は静かだったが休みらしい一日を過ごせてとても満足だった。